落語「お文さん」

副住職です!

今は亡き笑福亭松喬師匠の「お文さん」を久々に拝聴しました。

演目の題になっている「お文(おふみ)」とは本願寺第8代蓮如上人が門弟の方々に送られた、浄土真宗のみ教えを分かりやすく簡潔に書き記されたお手紙の事です。
私たち本願寺派(西本願寺)ではご文章(ごぶんしょう)と言います。

この演目、今はあまり高座にかかる事がないそうです。松喬師匠曰く「あまり面白くない」とのこと。確かに、お話としてはそんなに面白いお話ではないと思います。しかも登場人物が多いんですよ。

話がそれほどでもない上に登場人物が多い。これは落語家さんの腕がないと、聴き手にとってはほんとうに退屈な時間が過ぎてしまうと思います。

で、松喬師匠の「お文さん」。

最高に面白いんです‼︎
なんでこんなに面白いんだ!!

船場の酒屋に赤子を抱いた男がやって来て、その赤子を酒屋の丁稚である定吉に預けて逃げ去っていく所から話が始まります。

赤子を預け逃げ去った男を探す話かと思いきや、話はまったく予想だにしない方向に向かいます。酒屋の若旦那と奥さんには子供がいませんでした。大旦那は赤子を酒屋の跡取りにしようと若旦那である息子に大胆な提案をします。

跡取りにすると決めた大旦那は、今日中に乳母さんを探してくるようにと定吉に用事を頼みます。そして手伝い人(今でいう何でも屋さん。左官さん、大工さんなどの土木関係の手伝いをしていた人)の又兵衛に「どこぞに乳母さんがいないか聞いてきなさい!」とこれまた無理難題を吹っかけます。
定吉はそんなすぐに乳母さんがみつかるわけないやないか‼︎と困惑。
しかし、又兵衛の所にいくと、なんとすぐに乳母さんを連れてきます。その名も「お文」。

実はお文という乳母さんは若旦那の愛人で、赤子は2人の子供だった・・・。

そこから話がどう展開していくのかは、是非とも聴いて頂きたい‼︎しかも松喬師匠の「お文さん」を‼︎

と言いたいのですが、あまり口座にかけられる演目ではないためにYouTubeにもアップされていません。
興味のある方は釈徹宗先生著「おてらくご」の付録CDに松喬師匠の「お文さん」が収録されていますので、そちらをご購入して下さい!

話としては、あまり褒められた話ではありません。なにせ不倫の話ですからね。

ですが、松喬師匠は多くの登場人物を一人一人、実に魅力的に演じ分けます。私が特に好きなのは丁稚の定吉です。松喬師匠にかかるとほんとにキュート!

そんなに面白くないお話を魅力的にしてしまう。あまり褒められた話ではないのに魅力的になってしまう。師匠の話芸にただただ驚嘆するばかりです。

松喬師匠は二度、生で高座を見た事があります。西本願寺の伝道院と東西落語名人選。しかも2回とも「お文さん」でした。

来年は師匠の七回忌。ほんとに早いものです。

松喬師匠の落語は「お文さん」以外もほんとうに面白いので、是非ともみなさん聴いてみて下さい‼︎